COLUMNE
“Birth of the Cool”
date created : 2024.8.15
white by : doukin
1930-1940年代に製造された、ロンジンの手巻きレクタンギュラーウォッチ。腕なじみのよい伸びやかなケースに、ペンシル針の3針スモールセコンド、ローマンインデックスと直線のみで構成されたアール・デコの文字盤の組み合わせ。
アール・デコらしいメカニカルなリズムを感じるデザインだが、そこにより実用性を追求するような禁欲的なタッチが加わる。黒い文字盤と、シンプルな白のローマンインデックスのコントラストが、秀逸にその「用」のトーンを強調している。
アール・デコが流行する最中、少しづつモダニズムが萌芽として現れはじめるこの時代らしさを味わえる時計だ。
腕時計が、おのおのブランドのラグジュアリーをコマーシャルに誇示しなければいけない現代。寡黙に自らの美学に徹するこのロンジンのような時計の存在は、より特別に写るだろう。
丁度、全く同じ時代に、この時計を指すのにぴったりな言葉が生まれた。
太さの異なるいくつかの線で構築されていく、モノトーンの世界。個性と実用性の慎ましい結実。
そう、まさに”クール”だ。