COLUMNE
ペール・トーンの男らしさ
date created : 2024.8.15
white by : doukin
それぞれの時代を象徴するプレーンなデザインのパテック・フィリップをみると、なぜ彼らが賞賛を浴び続けているのかよくがわかる。1960年代に製造されたこのパテック・フィリップは、その良い例だ。
細めのバーインデックスにペンシルハンド、直線的なラグという60年代のミニマルなスタイルを模範的に踏襲したこの2針の手巻きドレスウォッチは、シンプルでクリーンだ。チューリヒの老舗BEYERのサインは、この時計の由緒を自ずと明らかにしている。あなたが古い映画を楽しめる類の人間ならば、同様にこのすばらしいドレスウォッチの魅力も理解できるだろう。
この時計を、誇らしげにエナメル象嵌によって施されたパテック・フィリップのロゴにふさわしい特別なものに仕立てているのは、縦横にヘアラインを入れた文字盤だ。シャープな仕上げは光を当てると表情を変えるが、どこかおぼろげで淡い魅せ方をする。
いうならば、バーで静かに相手を待つ紳士だ。おそらくマティーニあたりを注文して、じっとそこに佇んでいる。途中隣の人間に話しかけられるかもしれないが、2、3言気の利いたことを言ってまた静かにグラスに口を運ぶ。
ひかえめだが、確りとした美学を持ち合わせている男性像。自信とは誇らしげに見せつけるものではないのだ。