COLUMNE

誘惑と調和: 腕時計のスピリチュアリティ

date created : 2024.8.11

機能主義的な文字盤と優美にくつろぐケースの造形が、古典的な紳士向け腕時計のパッケージに収められている。  

ちょうど、フリッツ・ラングの映画『メトロポリス』に登場するロボットのような印象だ。両性具有的であることで、すべてのしがらみから隔絶して存在しているかのような佇まいを獲得している。

文字盤に円く引かれたラインによって、全体の視覚的な印象を引き締めているが、こうしてみるとそのラインはまるで円相__禅において悟りや調和、宇宙や全体性をあらわす__ではないか。

優れた工芸品の中には、しばしば世俗的ではない何かを感じさせるものがある。これはその中のひとつと言えるだろう。自分が過ごす時間を預ける器として時計を選ぶとき、こうした感覚を大切にしてほしい。