COLUMNE

死を想う

date created : 2024.8.25

white by : doukin

死はかつて、とても身近に存在していた。病気、災害、戦争。わたしたちの営みは、文明とは、それらを遠ざけるために営まれていると言っていい。

この見事なロザリオは、16世紀のドイツでつくられた。象牙、金や銀をもちいて、死と常にとなりあわせであるわたしたちの儚さを訴えている。
そして、避けられない結末に対する唯一の答え__祈りのための道具としてその像を結んでいるのだ。

古色を帯び、ひび割れた「死」は、文明の進歩でも克服しえない結末を、それに想いを馳せることの価値を、現代に生きるわたしたちに突きつけている。