COLUMNE
暁斎の骸骨
date created : 2024.8.29
幕末から明治にかけて活躍した日本画家、河鍋暁斎による骸骨。これは『暁斎漫画』、気軽なスケッチ集とでも言うべき中の1ページに描かれたものだ。
以前に紹介した、ヨーロッパの「死の舞踊」とは対照的にいやに楽しげな骸骨たちは、思い思いの格好で見るものを楽しませてくれる。
暁斎は自ら画鬼を名乗り、その名に違わぬ貪欲で反骨的な姿勢で様々な絵を遺した。彼の作風は、日本画かくあるべしというような、自信と気迫にあふれた生き生きとした傑作から、この骸骨のようなユーモラスで気軽なものまで、多岐にわたった。
人の動きを、肉のない骨だけのからだで表現する巧みな線表現は、コミカルな雰囲気とは裏腹に、彼の技巧が確かなものであることを示している。
人間臭く、生を謳歌しているような身振りの骸骨たちの様子は、絶望の果ての空笑いにも似た「死の舞踊」とはことなる、肉体の死を絶対視しない生死観を見せている。
死を遠ざけ続けることがあたりまえとなった現代に生きるわたしたちが、暁斎の闊達な筆運びによって躍動する骸骨に感じ入るものは少なくないだろう。