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c.1940s, Le Saleve, Single Push Chronograph "Officer's"

Calibre:339(ユニバーサル社製エボーシュ)

Movement:手巻き / Hand Wound

Case:18KYG,40mm
Strap: SOLAKZADE Original (ソラックザーデオリジナル アリゲーター)


 Officer's Watchは、言わば腕時計の原点であり、腕時計そのものの歴史に深く関係するものだ。というのも、初期の腕時計がそもそも懐中時計、あるいは女性用のペンダントウォッチを手首に固定して使ったことにある。世界初の量産された腕時計は1880年頃ドイツ皇帝ヴィルヘルム1世がドイツ海軍将校用にジラール・ペルゴ社に2,000個の腕時計を製作させたものであるといわれている。そしてとりわけ第一次世界大戦中、将校たちがこうした懐中時計などをベースにした時計を手首に着け始めた。塹壕戦と砲兵運用には精密な時刻管理が不可欠で、将校は素早く時刻を確認する必要があった。

世界初の量産腕時計(
ジラール・ペルゴ製、セイコーミュージアムより)

上着のボタンを外し、懐中時計を探す手間を省けることは、文字通り命に関わる利点だった。手首を一瞥するだけで時間が分かり、その間も戦場の危険から目を離さずに済む。そして20世紀初頭において時計を所有できるのはなお「将校階級の特権」に近かったため、こうした懐中時計をベースにした腕時計をOfficer's Watchと呼ぶようになったと言われる。今回は、有名ブランドではないが、Officer’s Watchという腕時計の原型を残した一本である。

 Le Saleveはこの時期のスイス製によく見られる無名のメーカーの一つで、数少ない資料によれば、Blum & Ostersetzer SAというメーカーがイタリア国内向けに製造していたモデルに使用していた名称で、イタリア国内のロンジンの総代理店も手掛けていたという。そして、Le Salève は複数のブランド名を使い分けていた中の一つで、他に Alba Watch Co、Chronometro Polare、Eccoなどが含まれる。また、クロノグラフを比較的得意としていたようであり、ヴァルジュー製のエボーシュを主として製造していたとされる。


コレクターや愛好家にも知られていないメーカーではあるものの、この個体は希少なユニバーサル社製のエボーシュを搭載しており、そのムーブメントの状態も良好。また、この個体は個体番号から推測するに、1930年代後半から1940年代初頭にかけて製造されたと考えられる。このワイヤー型のラグと、ダブルヒンジ、そしてエナメルダイヤルというクラシカルなデザインは、正に1920から30年代にかけて将校たちが好んで着けたOfficer’s Watchを彷彿とさせる。

この個体はパテックフィリップのRef.96のような現代の腕時計のデザインが普及しつつあった時代に、あえて古典的なデザインで製造されたという意味で、当時のイタリアの伊達な愛好家に向けた時計だったのかもしれない。





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